リベートとは?変動対価に関する収益認識について

簿記の解説
簿記の解説

一定の販売量を販売した場合に、リベートを支払うことがあります。

また、リベートは取引価格が変動する可能性があることから、取引価格の算定に関する収益認識基準の論点となります。

この記事では、リベートに関する会計処理について解説します。

この記事を読めばわかること

 リベートとは何か

 変動対価に関する会計基準

 リベートに関する例題の解き方

リベートとは

リベート(rebate)とは、英語で手数料・謝礼・賄賂を意味します。卸売業や小売業の取引高に応じて、メーカーがその仕入代金の一部を払い戻すことを指します

リベートの目的をわかりやすくいえば、メーカーの販売促進です。

商品の販売や請負などで競争が激しくなると、メーカーは契約金額の一定歩合を流通業者に戻すことを条件として、その契約を成立させます。つまり、謝礼を渡すことで自社の商品を取り扱ってくれる取引先や取引量を増やしてもらう目的があります。

リベートはあらかじめ取引金額や商品の代金を割引するのではなく、支払金額の一部を払い戻すことが特徴です。

収益認識基準の適用について

リベートは、顧客から企業に支払われるものではなく、逆に企業から顧客に支払われるものです。

収益認識に関する会計基準(63項)においては、顧客に支払われる対価は、顧客から受領する別個の財またはサービスと交換に支払われるものである場合を除き、取引価格から減額するとされています。

つまり、将来リベートを支払うと予想される部分については、収益を認識せず「返金負債(負債)」を計上します。

収益認識に関する会計基準
(顧客に支払われる対価)
63. 顧客に支払われる対価は、企業が顧客(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対して支払う又は支払うと見込まれる現金の額や、顧客が企業(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対する債務額に充当できるもの(例えば、クーポン)の額を含む。顧客に支払われる対価は、顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合を除き、取引価格から減額する

最頻値と期待値

変動対価の見積もりは、最頻値による方法か期待値による方法のうち、企業が権利を得ることになる対価の額をより適切に予測できる方法を用います。(収益認識に関する会計基準(51項)

変動対価の見積りの制限

売上収益は損益計算書における情報の中でも重要性が高いため、収益を一旦計上した後にその額が大きく変動することがないように留意する必要があるでしょう。

そのため、収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めるとされています。

収益認識に関する会計基準
(変動対価)
54. 第 51 項に従って見積られた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含める。

例えば、値引きが販売価格の20%〜50%と幅を持って見積もられる場合、30%以上の値引きはないと判断した場合には、販売価格×(1ー30%)の金額を持って取引価格とします。

売上収益は損益計算書における情報の中でも重要性が高いため、収益を一旦計上した後にその額が大きく変動することがないように、収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限定しています。

リベートに関する例題

例 題

下記の資料より、当期(第一四半期)に必要な仕訳を示しなさい。

  1. 当社は製品を外部のX社へ販売しており、販売条件の契約内容は下記の通りである。 
    ・製品の1個あたりの販売価格は10,000円である。
    ・X社への製品の年間販売個数が300個に達した場合は1個あたり500円、1,000個に到達した場合は1個あたり1,000円のリベートを当社がX社に支払う。
  2. 当期における製品のX社への年間販売個数は600個と予測している。
  3. 当期の第一四半期において、X社へ製品を140個販売した。
  4. 当社は、変動対価に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上される収益の額の著しい減額が発生しない可能性が極めて高いと判断した。

解答・解説

返金されると見込まれる金額については、収益を認識せず「返金負債(負債)」を計上します。そのため、収益の額は、返金されると見込まれる対価の額を除いて算定します。

この時、第一四半期において140個販売しており、年間で300個以上位を販売することが予測されます(1,000個には届かない)。そのため、値引額は1個あたり500円と見込んで返金負債を算定します。

商品販売時の仕訳(第一四半期)

借   方金  額貸   方金   額
現 金 預 金1,400,000売   上
返 金 負 債
1,330,000
70,000

現金預金:10,000円×140個(販売個数)
売  上:(10,000円ー500円(リベート見込))×140個
返金負債:500円(リベート見込)×140個

(追加)値引額の見積もりの修正

例題(追加)

第二四半期におけるX社への製品の販売数量は400個であった。第二四半期における仕訳を示しなさい。

商品販売時の仕訳(第二四半期)

借   方金  額貸   方金   額
現 金 預 金4,000,000売   上
返 金 負 債
3,530,000
470,000

現金預金:10,000円×400個(販売個数)
売  上:貸借差額
返金負債:470,000円(540,000円ー70,000円(第一四半期の返金負債))

第二四半期においては、累計で540個(140個+400個)販売しており、年間1,000個を販売することが可能であると判断できます。そのため、製品1あたりの値引を1,000円として返金負債を算定します。

540個分の値引額は、540,000円(540個×1,000円)となります。ただし、前期(第一四半期)に返金負債70,000円を計上しているので、第二四半期においては470,000円(540,000ー70,000)を返金負債として計上します。