四半期財務諸表の会計処理とは?税金費用に関わる簡便的な会計処理について

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四半期報告書とは、金融商品取引法(以下、金商法)の対象となる上場企業等が四半期ごとに作成する報告書です。また、四半期報告書で開示される財務諸表を四半期財務諸表といいます。

この記事では、四半期財務諸表における会計処理のうち、税金費用の取り扱いについて解説します。

この記事を読めばわかること

 四半期財務諸表における簡便処理とは

 見積実効税率とは

 見積実効税率の計算方法

簡便的な会計処理

金商法は、有価証券の発行会社に対して、より頻繁に、かつ詳細で信頼性の高い投資情報を投資家に提供するという観点から、四半期報告書の作成を要求しています。
しかし、頻繁に財務諸表を作成し公表する企業にとっては、その事務処理は負担となってしまいます。

そこで、企業の事務負担迅速な開示を考慮して、四半期報告書の内容の一部を省略・簡略化が認められるようになりました。

企業の財政状態、経営成績、およびキャッシュ・フローの状況に関する財務諸表利用者の判断を誤らせないように注意が必要となる。

納付税額の算出

納付税額の算出にあたり加味する加減算項目や税控除項目を、重要なものに限定することができます。

四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針

年度決算と同様の方法による税金費用の計算における簡便的な取扱い
15. 法人税その他利益に関する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という。)については、原則として年度決算と同様の方法により計算するものとされているが(会計基準第 14 項本文)、財務諸表利用者の判を誤らせない限り、納付税額の算出等において、簡便的な方法によることができる。この場合における簡便的な方法としては、例えば、納付税額の算出にあたり加味する加減算項目や税額控除項目を、重要なものに限定する方法がある。

繰延税金資産の回収可能額の判断について

繰延税金資産の回収可能性についての判断においては、経営環境に著しい変化が生じておらず、かつ、一時差異の発生状況について前年度末から大幅な変更がない場合は、前年度末の検討において使用した、将来の業績予測やタックスプランニングを利用することができます。

また、経営環境に著しい変化が生じ、または、一時差異の発生状況について前年度末から大幅な変更がある場合でも、前年度末の検討において使用した、将来の業績予測やタックスプランニングに、著しい変化等による影響を加味したものを利用することができます。

四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針

(経営環境等に著しい変化が生じた場合における繰延税金資産の回収可能性の判断)
17. 重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転又は悪化、その他経営環境に著しい変化が生じ、又は、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動があると認められる場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、財務諸表利用者の判断を誤らせない範囲において、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングに、当該著しい変化又は大幅な変動による影響を加味したものを使用することができる。

重要性が乏しい連結会社

連結財務諸表における重要性が乏しい連結会社(親会社及び連結子会社)において、経営環境に著しい変化が生じておらず、かつ、四半期財務諸表上の一時差異の発生状況について前年度末から大幅な変更がない場合には、税金費用の計算にあたり、税引前四半期純利益に、前年度の損益計算書における税効果会計適用後の法人税率を乗じて計算する方法によることができます。

四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針

重要性が乏しい連結会社における簡便的な会計処理
20. 連結財務諸表における重要性が乏しい連結会社(親会社及び連結子会社)において、重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転又は悪化及びその他の経営環境に著しい変化が発生しておらず、かつ、四半期財務諸表上の一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がない場合には、四半期財務諸表における税金費用の計算にあたり、税引前四半期純利益に、前年度の損益及び包括利益計算書又は損益計算書における税効果会計適用後の法人税等の負担率を乗じて計算する方法によることができる。
なお、この方法によった場合、当該連結会社の前年度末に計上された繰延税金資産及び繰延税金負債については、同額を四半期貸借対照表に計上することになる。

四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針

適用指針には、税金費用の計算に関係して下記の規定があります。

  • 原則として、年度決算と同様に算定。ただし、加減算項目や税額控除項目を重要なものに限定することを容認 (適用指針15)
  • 繰延税金資産の回収可能性の判断における前年度に使用した業績予測等の利用 (適用指針16、17)
  • 年間見積実効税率の利用 (適用指針18・19)
  • 重要性の乏しい連結会社における簡便的な会計処理 (適用指針20)
  • 未実現利益の消去に係る税効果は年間見積課税所得額を限度 (適用指針22・97)
  • 連結納税制度における年間見積実効税率の利用 (適用指針23)

見積実効税率の利用

法人税等については、四半期会計期間を含む年度の法人税等の計算に適用される税率に基づき、原則として年度決算と同様の方法により計算し、繰延税金資産および繰延税金負債については、回収可能性等を検討した上で、四半期貸借対照表に計上します。

ただし、税金費用については、四半期会計期間を含む年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて計算することができます。

見積実効税率 = 予想年間税金費用 ÷ 予想年間税引前当期純利益

  • 原則として、年度決算と同様の方法によって計算する
  • 年度の実効税率(税効果適用後)を合理的に見積る方法によって計算することができる

納付税額と法人税等調整額の区別について

四半期財務諸表における会計処理では納付税額と法人税等調整額を区別せずに、両者を一括して、税引前四半期純利益に見積実効税率を乗じて計算します。

そのため、一時差異を考慮する必要はなく、永久差異のみを考慮すれば足りることになります(後述)。

見積実効税率に関する例題

次の資料に基づき、第3四半期累計期間における税金費用の金額を答えなさい。

〔資料〕

  1. 当社は、税金費用の計算にあたって、税引前四半期純利益に年間見積実効税率を乗じる方法を採用している。
  2. 当期の第3四半期累計期間における税引前四半期純利益は350,000千円である。
  3. 当社の当年度における予想年間税引前当期純利益および課税所得を以下のように予想する。
     税引前当期純利益 450,000千円
     減価償却超過額 56,250千円(損金不算入)
     受取配当金 32,400千円(益金不算入)
     交際費 20,025千円(損金不算入)
     課税所得 493,875千円
  4. 当社の第3四半期累計期間における税額控除額は4,680千円であり、年間は5,850千円と見込まれる。
  5. 法定実効税率は40%である。

解答・解説

見積実効税率を乗じる方法(特有の処理)を採用しているため、まずは(1)及び(2)より、見積実効税率を計算します。

(1)予想年間税金費用
(450,000 ー 32,400(受取配当金*) + 20,025(交際費*) ) × 40% ー 5,850(年間控除額) = 169,200千円
*永久差異

四半期特有の会計処理では、税金費用を納付税額と法人税等調整額を区別せずに一括して計算するため、一時差異は税金費用と税引前当期純利益の比率に影響を及ぼさない。
そのため、実効税率の算定上、永久差異を考慮すれば足りる。

(2)見積実効税率
169,200 ÷ 450,000(予想年間税引前当期純利益) = 37.6%(見積実効税率)

(3)第3四半期累計期間における税金費用の計算
四半期当期純利益に見積実効税率を乗じて算定します。
350,000 × 37.6% = 131,600千円

永久差異とは

永久差異とは、税引前当期純利益の計算において、費用または収益として計上されるが、課税所得の計算上は、永久に損金または益金に算入されない項目をいいます。 これらの項目は、将来、課税所得の計算上で加算または減算させる効果を持たないため、一時差異等には該当せず、税効果会計の対象になりません

 交際費等の損金算入限度超過額

 寄付金の損金不算入

 損金経理延滞税

 受取配当金の益金不算入 等