総記法とは?商品売買取引における総記法の仕訳と決算整理について

簿記の解説
簿記の解説

商品売買に関する記帳方法には、三分割法(三分法)売上原価対立法分記法総記法などいくつかの方法があります。

三分法や売上原価対立法についてはよく出題されることがあると思いますが、総記法については馴染みのない方もいるかもしれません。

この記事では、そんな総記法の仕訳や決算整理について解説します。

こんな人におすすめ !

 総記法とは何か理解したい

 総記法の仕訳と決算整理を理解したい

 総記法のメリット・デメリットは?

総記法とは

総記法とは商品(資産)」という単一の勘定を使って商品売買を記帳する方法です。

総記法は、商品を仕入れたときは仕入原価(購入した価格)を使い「商品」勘定の借方に記帳し、商品を販売したときは売価(販売価格)を使って「商品」勘定の貸方に記帳します。

 商品(資産)勘定のみを使用する

 仕入時は「原価」で借方に記帳

 販売時は「売価」で貸方に記帳

商品を仕入れたときも販売したときも「商品」勘定を用いて処理するため、決算整理前残高試算表の商品勘定の残高は基本的に貸方になります。(原価>売価のときは借方残高になる)

通常は「原価<売価」のため、決算整理前の残高は貸方になります。

商   品
(原 価)(売 価)

総記法の仕訳

総記法では、商品を仕入れたときは仕入原価(購入した価格)を使い「商品」勘定の借方に記帳し、商品を販売したときは売価(販売価格)を使って「商品」勘定の貸方に記帳します。

使用する勘定科目が少なく仕訳がシンプルな点は総記法のメリットと言えます。

期中取引の仕訳

商品を仕入れたときは、商品勘定を借方に原価で記帳します。

借   方金   額貸   方金   額
商   品XXX買 掛 金 等XXX

商品を売り渡したときは、商品勘定を貸方に売価で記帳します。

借   方金   額貸   方金   額
売 掛 金 等XXX商   品XXX

決算整理仕訳

決算整理仕訳では、販売した商品の利益を「商品売買益(収益)」勘定に振り替えます。

借   方金   額貸   方金   額
商   品XXX商品売買益XXX

「商品」勘定の貸方は基本的に商品を販売したときの利益を表すため、それを「商品販売益」勘定などに振り替えます。商品勘定は次のようになります。(期首及び期末商品は存在しないと仮定)

例:80円で仕入れた商品を100円で販売した。

商   品
当期商品仕入高
80
当期売上高
100
商品販売益
20
商品販売益

商 品  20

総記法における利益の計算

総記法を前提とした問題では、売上総利益が明記されていない場合であっても、決算整理前の商品勘定残高と期末商品棚卸高から商品販売益(=売上総利益)を計算することができます。

決算整理前残高が貸方残高の場合

決算整理前の「商品」勘定残高が貸方残高の場合は、

整理前残高 + 期末商品棚卸高 の算定式で売上総利益を計算することができます。

決算整理前T/B(残高試算表)の商品は10円の貸方残高です。

整理後の「商品」勘定残高を期末商品の金額になるように調整する(振り替える)と考えるとわかりやすいと思います。

借   方金   額貸   方金   額
商   品30商品販売益30

仕訳を転記すると、それぞれの勘定は次のようになり、期末商品も問題文のとおり10円の貸方残高となります。

商   品
期首商品
仕入高売上高
商品販売益 30整理前T/B 10
期末商品20
商品販売益

商 品  30
整理前T/Bの商品勘定が貸方残高

 商品販売益=整理前B/T+期末商品棚卸高

決算整理前残高が借方残高の場合

決算整理前T/Bの「商品」勘定残高が貸方残高の場合は、

期末商品棚卸高 ー 整理前残高の算定式で計算することができます。

決算整理前T/Bの「商品」勘定は10円の借方残高です。

また、期末商品は20円なので振替るべき金額は借方10円となり、これが商品販売益となります。

借   方金   額貸   方金   額
商   品10商品販売益10

期末商品が20円の貸方残高になっていることを確認しましょう。

商   品
期首商品 0
仕入高売上高
整理前T/B 10期末商品 20
商品販売益 10
商品販売益
商 品  10
整理前T/Bの商品勘定が借方残高

 商品販売益=期末商品棚卸高ー整理前B/T

総記法の例題

期中の仕訳

1. 商品仕入時の仕訳

借   方金   額貸   方金   額
商   品300買 掛 金300

2. 商品販売時の仕訳

借   方金   額貸   方金   額
売 掛 金500商   品500

決算整理仕訳

期首商品棚卸高と期中取引を踏まえると、商品勘定は次のように100円の貸方残高となります。

商   品
期首商品 100売上高 500
仕入高 300
整理前T/B 100

期末商品棚卸高は90円なので、期末商品100円+90円=190円を商品販売益に振り替えます。

借   方金   額貸   方金   額
商   品190商品販売益190
整理前T/Bの商品勘定が貸方残高

 商品販売益=整理前B/T+期末商品棚卸高

決算整理仕訳を行うことで、商品売買益への振替と期末商品棚卸高の算定をすることができます。

商   品
期首商品 100売上高 500
仕入高 300
商品販売益 190整理前T/B 100
期末商品 90
商品販売益
商 品  190

(参考)売上原価を算定すると次のようになります。

商   品
期首商品 100売上原価 310
仕入高 300(貸借差額)
期末商品 90

総記法のメリット・デメリット

総記法のメリットは、仕訳がシンプルという点です。総記法では、商品を仕入れたとき、売上たときは「商品」勘定を使って処理するため、記録を簡略化することができます。

一方で、総記法は商品ごとに原価が分かれず、全ての原価が1つの勘定科目にまとまるため、個別の原価を把握することが難しくなるというデメリットもあります。また、商品勘定の残高が貸方になるなど勘定分析をするための仕組みを理解することがやや複雑になります。

記帳方法の種類メリットデメリット
分記法・記帳処理がスムーズで手間が少ない・決算整理が必要
・業績をリアルタイムで把握できない
三分法・商品売買の利益と在庫残高を随時把握できる
・決算整理が不要
・計上するたび売上原価の把握が必要
・決算まで、売上高と売上原価の合計額が把握できない
総記法・使用する勘定科目が少ないので仕訳がシンプル・個別に原価が把握できない
・仕組みを理解することがやや難しい

まとめ

この記事では、総記法について解説しました。

総記法は整理前残高試算表の残高が貸方になるのが特徴でした(場合によっては借方になることもあります)。複雑に感じるかもしれませんが、記録を簡略化することができる方法なので、その仕組みを理解することが重要です。

また、総記法は商品売買以外にも用いられることがあるため、考え方を理解しておくと良いでしょう。