企業結合とは?吸収合併・株式交換の基本的な仕訳を理解する

簿記の解説
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この記事では、吸収合併・株式交換・株式移転の基本的な仕訳や財務諸表の作成方法について解説しています。

この記事を読めばわかること

 企業結合とはどのような取引か

 具体的にどのような取引があるか

 吸収合併・株式交換・株式移転の仕訳

企業結合とは

企業結合会計は、会社や事業が1つの報告単位に統合される取引に対する会計です。

報告単位とは、財務諸表の作成単位のことを意味しています。取引の形態としては、吸収合併株式交換株式移転があります。

取引の形態

 吸収合併

 株式交換

 株式移転

また、企業結合は経済的実態に基づいて取得共通支配下の取引共同支配企業の形成に分類され、それぞれ異なる会計処理が適用されます。

会計上の分類

 取得

 共通支配下の取引

 共同支配企業の形成

この記事では、比較的多く出題される取得について解説します。

取得とは

取得とは、ある企業が他の企業または事業に対する支配を獲得することをいいます。

例えば、これまでに資本関係のない会社との間で吸収合併をしたり、株式交換をしたりすることで新たに支配を獲得する取引が該当します。

取得の会計処理ではパーチェス法が適用されます。

パーチェス法
被取得企業から受け入れる資産および負債の取得原価を、対価として交付する現金および株式等の時価(公正価値)とする方法

なお、取得する側の企業を取得企業、取得される側の企業を被取得企業といいます。

吸収合併

吸収合併とは、合併によって存続会社が消滅する会社の権利義務の全部を吸収して承継する手法です。

吸収合併では、存続する会社のみを残して吸収される側の会社は消滅します。その上で、消滅する会社の資産・負債(権利義務)の全部を存続する会社に移し替える(承継する)方法です。

ここがポイント!

 吸収される側の会社は消滅する

 吸収される会社の資産と負債を引き継ぐ

例 題

以下の資料より、吸収合併存続会社の仕訳を答えなさい。(単位:円)

  • 取得企業はA社と判定された。(吸収合併までA社とB社に資本関係はない)
  • 1株あたりの時価
      A社株式:10円
      B社株式:8円(発行済株式10株)
  • A社への払込資本は全額資本金とする。
  • 吸収合併時のB社の資産の時価は160円であった。
個別貸借対照表A社
資 産240負 債
資本金
利剰余
120
70
50
個別貸借対照表B社
資 産150負 債
資本金
利剰余
90
40
20

個別財務諸表上の会計処理

吸収合併までA社とB社に資本関係はないため、吸収合併は取得として処理します。すなわち、B社の資産と負債を時価で受け入れます。

考え方の解説

 これまでに資本関係がなく取得に該当

 取得の場合にはパーチェス法が適用

 資産と負債を時価で受け入れる

存続会社の個別財務諸表上の会計処理

借   方金   額貸   方金   額
資   産
の れ ん
160
10
負   債
資 本 金
90
80*1

時価で計上する(取得に該当)

*1 支払条件の対価
B社株式10株に対して、A社株式8株を対価として交付するので、80円(@10×8株)となります。

 

1株あたりの株価は10円および8円なので、合併比率は10:8、すなわち1:0.8 です。(B社株式1株に対してA社株式0.8株を交付する)

吸収合併直後の個別財務諸表

存続会社の個別財務諸表は次のようになります。これは、存続会社であるA社の「吸収合併直前の個別財務諸表」+「吸収合併に係る仕訳」で作成します。

個別貸借対照表A社
資 産
のれん
400
10
負 債
資本金
利剰余
210
150
50

 吸収合併直前の個別財務諸表+仕訳

株式交換

株式交換は、完全子会社となる会社の発行済株式のすべてを完全親会社となる会社に取得させる手法です。株式交換後には、対象会社に対して100%の完全支配関係が生じます。

吸収合併と違って、完全子会社となった会社が消滅するわけではありません。あくまで、完全親子関係を構築するための手続きになります。

ここがポイント!

 完全子会社は消滅する訳ではない

 個別上は株式を取得した仕訳になる

完全親会社の個別財務諸表上の会計処理

株式交換では、A社個別上はB社の株式を取得するというのが実態になります。また、吸収合併のときと異なりB社は消滅しません
株式交換はあくまで、完全親子関係を構築するための手続きになります。

借   方金   額貸   方金   額
B 社 株 式80資 本 金80*1

時価で計上
*1 A社株式8株×@10=80円

株式交換の場合でも株式交換比率は同様に1:0.8 です。
すなわち、B社株式80円(@8円×10株)を取得するためにA社株式8株を対価として支払います。

連結財務諸表上の会計処理

1. 資産の時価評価

借   方金   額貸   方金   額
資  産10評 価 差 額10

2. 連結修正仕訳

借   方金   額貸   方金   額
資 本 金
利益剰余金
評 価 差 額
の れ ん
40
20
10
10
B 社 株 式80

連結財務諸表

個別貸借対照表A社
資 産
のれん
400
10
負 債
資本金
利剰余
210
150
50

このように、吸収合併と株式交換は法的実態は異なりますが、経済的実態は同じものであり、株式交換後の連結貸借対照表は吸収合併のA社個別貸借対照表と同一になります。

 

吸収合併と株式交換、株式移転は法的実態は異なるが経済的実態は同じ