資本の効率的運用と回収を考慮した分析手法にCVPC分析と呼ばれる方法があります。
この記事では、CVPC分析の概要や計算方法について解説します。
CVPC分析の概要について
変動的資本と固定的資本の分類
目標資本利益率達成売上高の計算方法について
CVPC分析とは
CVPV分析(cost volume profit capital analysis)とは、原価、営業量、利益の関係を分析するCVP分析に加え、経営過程に投下されている資本の効果的運用とその回収(調達した資本がどれだけの利益を獲得したか)も考慮した分析手法のことです。
売上高と資本の関係
売上高(生産量)との関係において、資本を変動的資本と固定的資本に分類します。
売上高の増減に比例して増減する資本を変動的資本、売上高の増減に関係なく一定の資本を固定的資本といいます。
- 変動的資本:売上高(生産量)の増減に比例して増減する資本
変動的資本率=売上高/変動的資本 - 固定的資本:売上高(生産量)の増減に関係なく、一定の資本
(図表1 売上高との関係における資本の分類)
貸借対照表 | 売上高との関係 | ||
流動資産 | 変動的資本 | ||
あ | |||
固定資産 | 固定的資本 | ||
あ |
目標資本利益率達成売上高
目標資本利益率達成売上高は、目標とする資本利益率を達成するための売上高です。計算式は次のとおりです。
目標資本利益率達成売上高 =(総資本×目標資本利益率+固定費)/限界利益率
資本利益率とは、投下した資本に対してどれだけの利益を生んだかという指数であり、資本に対する収益性を表す指標です。
また、単に資本利益率という場合は、投下資本利益率(ROI)を指します。
- ROI(Return On Investment):投下資本利益率
投じた費用に対して、どれだけの利益を上げられたかを示す指標。
ROI = 利益/投下資本×100
目標資本利益率達成売上高の具体的な計算
例題を使って、目標資本利益率達成売上高の計算についてみてみましょう。
算定式に当てはめる方法
数値を算定式に当てはめて計算します。
目標資本利益率達成売上高= ((200*+550)× 40%+300)/0.6(限界利益率)
よって、1,000千円になります。
* 200(変動的資本)=1,000(売上高)×20%
営業利益と資本の関係から計算する方法
売上高をSとして考えます。
「営業利益=総資本×40%」になる売上高Sを求めます。
(0.6Sー300)=(0.2S+550)× 40%
よって、S=1,000千円となります。
損益計算書 | 貸借対照表 | |||
売 上 高 | S | 変動的資本 | ||
変 動 費 | 0.4S | 0.2S | ||
限 界 利 益 | 0.6S | 固定的資本 | ||
固 定 費 | 300 | 550 | ||
営業利益 | 0.6Sー300 |
例題
当社は、A製品とB製品を製造販売している。当期の財務状況は次の資料のとおりであり、当期の財務データを前提に次期の利益計画を策定する。ただし、市場調査を踏まえて、A製品の次期の製造販売数量については当期と同じ水準のまま据え置くことにした。次期について、(ア)全社の損益分岐点売上高と、(イ)全社で目標総資本経常利益率10%を達成する時のB製品の製造販売数量を計算しなさい。
〔資料〕
1.損益計算書および貸借対照表は次のとおりである。(単位:千円)
損益計算書 | 貸借対照表 | |||
売 上 高 | 1,000,000 | 流 動 資 産 | 520,000 | |
変 動 費 | ( ? ) | (うち恒常有高 | 20,000 | |
限 界 利 益 | ( ? ) | 固 定 資 産 | 230,000 | |
固 定 費 | 250,000 | 計(総資本) | 750,000 | |
経 常 利 益 | ( ? ) | |||
(注)流動資産総額ー流動資産のうち恒常有高=変動的資本 |
2.全社の売上高の内訳はA製品400,000千円、B製品600,000千円である。
3.販売価格は、A製品が4,000円/個、B製品が2,500円/個である。
4.変動費は、A製品が2,700円/個、B製品が2,000円/個である。固定費は全て共通固定費である。
5.資本は、売上高に対して比例して増減する変動的資本と、一定額である固定的資本に分けて把握される。変動的資本のうち、A製品に関連するものは260,000千円、B製品に関連するものは240,000千円である。
解答・解説
全社の損益分岐点売上高
当期のA製品及びB 製品の貢献利益率は次のとおりです。(単位:円)
なお、貢献利益率は次期においても変更はありません。
A製品 | B製品 | |
販売価格 | 4,000 | 2,500 |
変動費 | 2,700 | 2,000 |
貢献利益 | 1,300 | 500 |
貢献利益率 | 0.325 | 0.2 |
A製品の売上高については当期と同じ金額として考えます。
また、B製品については売上高が不明なので、次期のB製品の売上高をXと置きます。そして、損益分岐点売上高(営業利益がゼロになる売上高)を求めます。
A製品 | B製品 | |
貢献利益 | 130,000* | 0.2X |
固定費 | 250,000 | |
営業利益 | 0(損益分岐点) |
* 400,000(A製品売上高)×0.325(貢献利益率:当期と同じ)
130,000+0.2Xー250,000 = 0
X = 600,000(B製品の売上高)
したがって、損益分岐点の売上高は400,000円+600,000円=(ア)1,000,000円となります。
目標総資本経常利益率10%を達成するB製品販売数量
A製品の売上高は当期と同じであるため、変動的資本も当期と同額になります。
また、B製品の売上高が不明なため、Yとおいて算定します。
A製品 | B製品 | |
変動的資本率 | 260,000 | 0.4X |
固定的資本 | 250,000 |
(260,000+0.4X+250,000)× 10% = 51,000+0.04X
すなわち、営業利益が51,000+0.04Xになる売上高を求めれば良いということになります。
A製品 | B製品 | |
貢献利益 | 130,000 | 0.2X |
固定費 | 250,000 | |
営業利益 | 51,000+0.04X |
(130,000+0.2X)ー 250,000 = 51,000+0.04X
よって、X = (ア)1,068,750円になります。