カスタマー・ロイヤリティ・プログラムとは?ポイントに関する会計処理について

簿記の解説
簿記の解説

家電量販店やネット通販で買い物をすると、商品と交換できるポイントが付与される場合がありますが、ポイントを付与した企業側ではどのような会計処理を行う必要があるのでしょうか。

この記事では、ポイントに関する会計処理について解説します。

この記事を読めばわかること

 カスタマー・ロイヤリティ・プログラムとは何か

 ポイントに関する会計処理について

 ポイントに関する収益認識基準

カスタマー・ロイヤリティ・プログラムとは?

カスタマー・ロイヤリティ・プログラムとは、顧客に対してポイント,割引券,マイルズ等のインセンティブを与える取引の総称をいいます。

企業は財またはサービスを提供する契約に、追加の財またはサービスを値引きまたは無償で提供するオプションを付与することがあります。

これらは、将来ポイントと交換に商品等を引き渡す履行義務を別個の履行義務として識別することから、履行義務の識別と関連した論点といえます。

ポイントに関する会計処理

追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合の会計処理

企業が商品を売り渡した際にポイントを付与した場合、顧客はそのポイントを使用して追加で財・サービスを購入することができます。

収益認識に関する会計基準においては、追加の財またはサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合の会計処理として記載されています。

収益認識に関する会計基準の適用指針
48. 顧客との契約において、既存の契約に加えて追加の財またはサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合には、当該オプションが当該契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供する時にのみ、当該オプションから履行義務が生じる。

ここでの重要な権利を顧客に提供する場合とは、そのオプションにより、顧客が属する地域や市場における通常の値引きの範囲を超える値引きを顧客に提供する場合を指します。

収益を認識するタイミング

ポイントに関する会計処理については、将来の財又はサービスが移転する時、あるいは当該オプションが消滅する時に収益を認識することになっています。

つまり、顧客がポイントを使用(オプションが消滅)して、商品を購入するときに収益として認識します。

収益認識に関する会計基準の適用指針
140. 顧客との契約において、既存の契約に加えて追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合に、当該オプションが顧客に重要な権利を提供するときには、顧客は実質的に将来の財又はサービスに対して企業に前払いを行っているため、将来の財又はサービスが移転する時、あるいは当該オプションが消滅する時に収益を認識する(第48項参照)。

すなわち、ポイント付与時点においては、「契約負債(負債)」を計上し、将来の財またはサービスが移転する時、あるいは当該オプションが消滅する時に収益を認識します。

ポイント付与時の仕訳

ポイント付与時点においては、「契約負債(負債)」を計上します。
契約負債の金額は、それぞれの独立販売価格の比率に基づいて「商品」と「ポイントの使用見込み」に按分します。

借   方金  額貸   方金   額
現 金 預 金XXX契 約 負 債XXX

ポイント使用時の仕訳

ポイントが使用されたときには、付与時点に計上していた契約負債を取り崩して収益を計上します。

借   方金  額貸   方金   額
契 約 負 債XXX売   上XXX

カスタマー・ロイヤリティ・プログラムの例題

例題

次の当社におけるX1年度の資料から、ポイントに関する取引の仕訳を示しなさい。

  1. 当社は商品を100円分購入するごとに1ポイントを顧客に付与している。当社の商品を将来購入する際に、顧客はポイントを使用して1ポイントあたり1円の値引きを受けることができる。
  2. 当社は、商品10,000円(独立販売価格と同額)を現金で販売し、将来の当社の商品購入に利用できるポイント(100ポイント)を顧客に付与した。
  3. 当社は商品の販売時点で、将来95ポイントが使用されると見込み、1ポイントあたりの独立販売価格を0.95円(総額95円)と見積もった。
  4. 当期末において45ポイントが使用された。

商品販売時の仕訳

商品を売り渡して受け取った対価10,000円を、商品とポイントに配分します。
配分は独立販売価格の比率に基づいて行いますので、10,000(商品):95(ポイント)の比率で按分します。

借   方金  額貸   方金   額
現 金 預 金10,000売   上
契 約 負 債
9,906
94

商  品:10,000円 × 10,000 /(10,000+95)=9,906円(当期の売上)
ポイント:10,000円 × 95 /(10,000+95)=94円(契約負債)

ポイント利用時の仕訳

ポイントが使用され、財またはサービスが移転する時に収益として認識します。

当期末では、使用見込みである95ポイントのうち、45ポイントが使用されました。(資料3・4より)
そのため、計上した契約負債94円に対して45/95を取り崩して、収益として認識します。

借   方金  額貸   方金   額
契 約 負 債45売   上45

94円 × 45/95=45円(当期末のポイント使用分を収益として認識)

  • 使用される可能性を考慮しポイントの独立販売価格を見積もる。
  • 販売時に独立販売価格の比率に基づき、商品部分とポイント部分に取引価格を配分する。
  • ポイントは、使用されたときまたは失効時に収益を認識する。
  • 最終的には顧客から受け取った金額が収益の合計になる。

ポイント使用見込みの見積り変更

ポイントの使用見込みを変更した場合は、遡求適用は行わずに変更後のポイント使用見込みに基づいて、契約負債の取り崩しを行います。

例題(追加)

当社はX2年度において、使用されると見込むポイント総数の見積もりを97ポイントに変更した。なお、当該年度に40ポイントが使用された。

借   方金  額貸   方金   額
契 約 負 債37売   上37

使用見込みのポイント総数を変更した場合は、変更後のポイント使用見込みについて算定します。
(契約負債計上額)×(ポイント使用累計)/(使用見込変更後

94円×85ポイント/97ポイント=82ポイント
82ポイントー45ポイント(X1年度に計上した収益)=37ポイント(X2年度の収益)

ポイントの使用見込みを変更した場合は、遡求適用は行わずに変更後のポイント使用見込みに基づいて算定する。