品質原価計算とは？品質原価の具体例や例題について

より低い原価で高い品質を達成するために、製品の品質を維持・管理するために発生している原価を集計して、これを分析する必要も出てきます。

そのような場合に活用されるのが、品質原価計算（quality costing）です。

この記事では、品質管理原価計算について解説します。

品質原価計算とは

品質原価計算（quality costing）とは、品質管理活動を会計的視点から捉えることにより品質原価を測定・分析し、他の経営情報との統合を図る原価計算システムをいいます。

より低い原価で高い品質を達成するために、製品の品質を維持・管理するために発生している原価を集計して、これを分析するための原価計算

品質原価計算における品質とは、顧客期待と実際の結果（製品）との乖離度をいいます。しかし、顧客期待は定性的であるため、製品の設計仕様を品質測定の基準と考えて算定します。

（図表1　品質原価計算の対象）

顧客期待	↔︎ 設計品質	設計仕様	↔︎ 適合品質	製品
		品質原価計算の論点

品質原価の分類

品質原価（quality cost）は、品質不良を発生させないように評価し予防するために発生した原価と、品質不良発生の結果、発生した原価とに分類されます。

会計的測定可能性の観点からの分類

品質原価は、会計的に測定可能か否かの観点から、直接的品質原価と間接的品質原価に分類されます。

発生原因の観点からの分

品質原価は発生原因の観点から品質適合原価と品質不適合原価に分類されます。

品質適合原価：不適合品の発生を予測して、未然に防止する活動に起因して発生する原価（予防原価と評価原価に分類される）
・予防原価：不適合品が発生することを予防する活動に起因して発生する原価
・評価原価：不適合品を選別する活動に起因して発生する原価

品質不適合原価：すでに不適合品が存在することに起因して発生する失敗原価（内部失敗原価と外部失敗原価に分類される）
・内部失敗原価：顧客に引き渡される前に、不適合品として識別されたことに起因して発生する原価
・外部失敗原価：不適合品を顧客に引き渡してしまったことに起因して発生する原価

品質原価の分類と具体的な内容は下表の通りになります。

（図表２　品質原価の分類と具体的事例）

	品質適合原価		品質不適合原価
	予防原価	評価原価	内部失敗原価	外部失敗原価
直接的品質原価	教育訓練費 サプライヤー調査費 製造工程自体の検査費 工程設計費など	材料受入検査費 他社製品品質調査費 製品出荷検査費	仕損品廃棄費 代品制作費 仕損補修費	不良品回収費 不良品修繕費
間接的品質原価				機会原価（企業のイメージ低下に伴う売り上げ減少） クレーム調査費

例題

当社は、品質管理問題に取り組むため、品質原価計算を導入している。次の資料に基づき、文章の（　ア　）〜（　ウ　）に当てはまる数値を答えなさい。

〔資料〕

	当期	翌期（見込）
仕損費	10,500	8,200
製品設計改善費	12,500	12,600
損害賠償費	1,600	1,400
製品出荷後補修費	7,700	7,500
製造工程検査費	2,000	1,900
返品廃棄処分費	2,400	2,300
製造工程改善費	18,500	19,100
製品出荷検査費	6,000	6,200
購入材料受入検査費	4,400	5,200
不良品手直費	3,300	3,300

品質管理活動を充実させることが計画されており、翌期の予防原価は、当期の金額に比べて（　ア　）千円、増加し、翌期の評価原価は、当期の金額に比べて（　イ　）千円増加することが見込まれる。一方で、翌期の失敗原価は、当期の金額に比べて（　ウ　）千円減少することが見込まれるため、品質管理活動の充実は有益であると考えられる。

解答・解説

例題の品質原価について分類すると次のようになります。

	当　期	翌　期	増　減
予防原価 製品設計改善費 製造工程検査費 製造工程改善費	12,500 2,000 18,500	12,600 1,900 19,100
合　計	33,000	33,600	（ア）600
評価原価 製品出荷検査費 購入材料受入検査費	6,000 4,400	6,200 5,200
合　計	10,400	11,400	（イ）1,000
失敗原価* 仕損費 損害賠償費 製品出荷後補修費 返品廃棄処分費 不良品手直費	10,500 1,600 7,700 2,400 3,300	8,200 1,400 7,500 2,300 3,300
合　計	25,500	22,700	（ウ）△2,800

* 問題文より、内部失敗原価と外部失敗原価を合わせて失敗原価と記載しています。