法人が得意先や仕入先などの事業関係者に対して、その事業関係者との取引関係を円滑にすることを目的とした接待のための飲食や贈答などの行為のための支出は、会計処理上は交際費として費用計上が認められます。
しかし、税務計算においては法人の規模に応じて一定の限度額を設けることにより、損金算入に一定の制限を行なっています。
この記事では、交際費の税務上の取り扱いについて解説します。
交際費とは何か
交際費の税務上の取り扱い
損金算入限度額の計算方法
交際費とは
交際費とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。
ただし、以下の費用は交際費から除かれることとなっています。
- 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
- 取引先との飲食等の費用で、一人当たりの金額が5,000円以下である費用
- その他の費用
(1)カレンダー、手帳など、これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
(2)会議に関連する弁当などを供与するために通常要する費用
(3)新聞、雑誌等の出版物または放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、または放送のための取材に通常要する費用
(注)上記2の費用の金額基準である5,000円の判定や交際費等の額の計算は、法人の適用している消費税等の経理処理(税抜経理方式または税込経理方式)により算定した価額により行います。
交際費に該当するもの | 交際費に該当しないもの | ||
得意先、仕入先等に対する費用 | ① 料亭などで行う接待に係る費用 ② 旅行、観劇等に招待する費用 ③ 中元、歳暮の贈答に要する費用 | 福利厚生費 | 従業員の慰安のための運動会、演芸会、旅行等の費用 |
接待に係る飲食費等 | 飲食その他これに類する行為のために要する費用で、一人当たりの支出額が5,000円以下のもの | ||
会議費 | 会議に関連して支出した茶菓、弁当等の供用費用 | ||
広告宣伝費 | 当社名や製品名入りのカレンダー、手帳、扇子等の物品の贈与費用 | ||
取材費等 | 出版物又は放送番組の取材の費用 |
また、交際費の損金不算入の税務調整は次のように行われます。
損益計算書 | 別表四(所得金額の計算) | |||
売 上 高 | 1,000 | 当期純利益 | 400 | |
売 上 原 価 交 際 費 | 400 200 | 加 算 | 200 | |
減 算 | ||||
当期純利益 | 400 | 所 得 金 額 | 600 |
税務上の取り扱い
交際費等の額は、原則として、その全額が損金不算入とされていますが、損金不算入額の計算に当たっては、下記の法人の区分に応じ、一定の措置が設けられています。
具体的には、次のいずれかのうち大きい金額が損金算入限度額となり、その金額を上限にして交際費の損金算入が認められます。
- 接待飲食費損金算入基準額
- 定額控除限度額
それぞれについて見ていきましょう。
接待飲食費損金算入基準額とは
企業外部の事業関係者への接待などの飲食に要した支出については、企業の規模に応じて、一定の額の損金算入を認めており、それを接待飲食費損金算入基準額といいます。
接待飲食費損金算入基準額の計算は、対象となる法人の期末資本金額によって異なります。
対象法人 (期末資本金額) | 接待飲食費損金算入基準額の計算 |
100億円以下 | 接待飲食費の金額×50% |
100億円超 | 0(全額損金不算入) |
接待飲食費とは、飲食その他これに類する行為のために要する費用であり、一人当たりの支出額が5,000円を超えるものをいう。(※社内飲食費を除く)
ただし、接待飲食費のうち、社内飲食費に該当するものを除きます。社内飲食費とは次のようなものを指します。
社内飲食費とは、飲食その他これに類する費用のうち、専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものをいい、5,000円基準の判定の対象及び接待飲食費の額には含まれない。
すなわち、会社の役員や従業員に対する接待等の費用は社内飲食費として取り扱われ、5,000円基準の適用はなく、接待飲食費にも該当しないため50%控除も適用されません。
- 資本金100億円超の法人:交際費を損金にすることはできない
- 資本金100億円以下の法人:接待飲食費のうち50%まで損金に算入できる
- 社内飲食費は全額が損金不算入の計算対象
定額控除限度額とは
企業規模の小さい法人については、年間800万円を限度とした定額控除限度額が設けられています。なお、定額控除限度額も、法人の期末資本金額によって決定されます。
対象法人 (期末資本金額) | 定額控除限度額 |
1億円以下 | 年間800万円 |
1億円超 | 0 |
比較的規模の小さい法人においては、年間800万円まで交際費を損金にすることができる
損金算入限度額の計算
損金算入限度額の計算についてまとめると以下のようになります。各法人の期末資本金額によって計算方法が異なります。
支出交際費*のうち、損金算入限度額を控除した分については損金不算入となります。(* 支出交際費:その事業年度において支出する交際費の額)
法人の規模 | 損金算入限度額 |
中小法人 (期末資本金1億円以下) | 次のいずれかの金額を選択できる ① 接待飲食費の50% ② 800万円 |
中小法人以外 (期末資本金100億円以下) | 接待飲食費×50% |
中小法人以外 (期末資本金100億円以上) | 全額損金不算入 |
交際費の損金不算入額の計算
例題
次の当期の資料によって、交際費の損金不算入額を求めなさい。
(1)当期中に交際費勘定として損金経理した金額は8,700,000円であり、その内容には次のものが含まれている。なお、残額は全て税務上の交際費に該当するものであり、そのうち接待飲食費は1,100,000円が含まれる。
- 得意先に当社の社名入りカレンダーを贈与した費用:120,000円
- 会議に際して支出した弁当に要した費用:240,000円
- 従業員の慰安のために行った運動会に要した費用:170,000円
- 得意先を料亭で接待した際の飲食費用(参加人数4人分の合計):120,000円
(2)当期において雑費勘定で処理した金額には次のものが含まれている。
- 得意先を販売促進のため料亭等で接待した費用(一人当たりの金額が5,000円を超えるもの):340,000円
- 従業員の慰安のための旅行費用:420,000円
- 当社の役員及び部長が会食した際の費用(参加人数6人分の合計):24,000円
当社の期末資本金額は200,000,000円である。
解答・解説
まずは、支出交際費*の金額を求めます。基本的には支出交際費の金額は損金不算入となるため、その金額を計算します。
(1)について、交際費として損金経理(経理処理)した8,700,000円のうち交際費に該当しない金額が含まれているためこれらを除外します。
- 得意先に当社の社名入りカレンダーを贈与した費用:広告宣伝費
- 会議に際して支出した弁当に要した費用:会議費等
- 従業員の慰安のために行った運動会に要した費用:福利厚生費
- 得意先を料亭で接待した際の飲食費用(参加人数4人分の合計):交際費(接待飲食費)
(2)は雑費として処理していますが、実質的に交際費に該当するものについて判定します。
- 得意先を販売促進のため料亭等で接待した費用(一人当たりの金額が5,000円を超えるもの):交際費(接待飲食費)
- 従業員の慰安のための旅行費用:雑費(旅費交通費)
- 当社の役員及び部長が会食した際の費用(参加人数6人分の合計):交際費(※社内飲食費)
したがって、支出交際費の金額は次のように計算できます。
8,700,000ー(120,000+240,000+170,000)+340,000+24,000*=8,534,000円
* 社内飲食費に該当するため5,000円基準では判断しない。
(3)損金算入限度額の計算
次に、交際費のうち損金算入が認められる損金算入限度額を計算します。
① 接待飲食費損金:(1,100,000+120,000+24,000)×50%=622,000
② 定額控除限度額:0(期末資本金1億円以下ではないため)
③ 損金算入限度額:622,000円
(4)損金不算入額:8,534,000ー622,000=7,912,000円
交際費の額から、損金算入限度額を差し引いた金額が損金の損金不算入額になります。