固定長期適合率とは?指標の計算方法や目安について

簿記の解説
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設備等の資産に投資するための資金を、株式の発行等による株主資本のみによって賄うことができず、銀行等からの借入や社債等を発行して賄っている企業は多くあります。

そのために、固定比率が100%を超えている企業も多々存在するため、日本の実情に即した財務の安全性を検討するためには、固定負債をも考慮した指標を用いた判定が適当であると考えられています。

この記事では固定長期適合率の計算方法、目安となる数値について説明します。

この記事を読めばわかること

 固定長期適合率とは何か

 固定長期適合率の計算方法

 固定長期適合率の目安と改善方法

固定長期適合率とは

固定長期適合率とは、自己資本と固定負債の合計額に対して、固定資産がどのぐらいの割合になっているかを示す数値です。会社の収益を生み出す固定資産が安定した資金で賄えているかどうかを表し、財務条項の把握に用いられます。固定長期適合率は低い方が好ましく、高い場合は改善に努める必要があります。

固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100

固定長期適合率の計算方法

例えば、固定資産300百万円、固定負債100万円、自己資本400百万円の場合、固定長期適合率は次のように計算できます。

300百万円÷(400百万円+100百万円)×100=60%

すなわち、固定資長期適合率は60%となります。

固定長期適合率の目安

固定長期適合率は、100%を基準に会社の財務状況が健全か健全でないかの判断が行われます。固定資産と自己資本と固定負債の合計額が同じである場合は、固定長期適合率が100%と計算されます。固定長期適合率が100%未満だと保有している固定資産は自己資本と固定負債の合計額以下であることになり、健全な財務状況だと判断されます。

固定長期適合率が100%以上の場合には、固定資産の一部が流動資産に依存していることになり、短期の資金で長期の資金需要を賄っている状態になります。

また、固定長期適合率が100%以上であることは、流動比率が100%以下であることを示すため、短期的な支払い能力についても問題があると判断されてしまうことになります。(下図参照)

貸借対照表
流動資産流動負債
固定資産
固定負債
純資産
  • 固定長期適合率は、企業の固定資産投資の安全性を判定する指標
  • 100%未満である方が望ましく、100%を超える場合は改善を要する

固定長期適合率の改善方法

固定長期適合率を改善するためには、計算式からもわかるように「分子を減らす」もしくは「分母を増やす」必要があります。

すなわち固定資産、自己資本、固定負債を増減させることによって改善を図ることができます

「固定資産の減少」「自己資本と固定負債の増加」が固定長期適合率を低下させることにつながりますが、借入である固定負債を増やすことは、かえって会社の財務状況に悪影響を与えることが考えられるため慎重に判断すべきです。自己資本の増加と固定資産の減少に結びつく方法には、以下のようなものがあります。

固定資産の見直し

使用していない、稼働していない状態の資産については、会社にとって必要なものであるかどうか判断する必要があります。特に不要な固定資産の保有することは、固定長期適合率を悪化させているだけでなく管理や手入れ、固定資産税の支払いが必要となるなどのデメリットも有しています。整理して売却することで、固定長期適合率を低くすることができます。

設備投資の見直し

固定長期適合率が高いと言うことは、自己資本と固定負債に対して固定資産を多く保有していることを意味しています。計画している設備投資がある場合には必要性や金額の妥当性を検討し直すことが必要です。

自己資本の増加

自己資本を増やす方法は、利益を増やす、増資によって資本金を増やすなどが挙げられます。ですが、自己資本を増やすには時間がかかります。そのため、固定長期適合率の改善を目的として自己資本の増加を図る場合は、中長期的なスケジュールで取り組むことが大切です。