経営レバレッジ係数とは?指標の求め方や目安について

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短期的な利益計画において、経営レバレッジ係数という指標が用いられることがあります。

経営レバレッジ係数は、営業量の変化率に対する営業利益の変化率を示す指標です。

この記事では、経営レバレッジ係数の計算方法について解説します。

この記事を読めばわかること

 経営レバレッジ係数とは何か

 経営レバレッジ係数の計算方法

 指標の意味と目安

経営レバレッジ係数とは

経営レバレッジ係数とは、 貢献利益を営業利益で除して算定した指標であり、営業量の変化率に対する営業利益の変化率を示すものです。

すなわち、経営レバレッジ係数は、売上高が変化したときに営業利益がどの程度変化するかを示します。
経営レバレッジ係数を計算することによって、売上高が変動したときに、わざわざ損益計算書を作成しなくても、営業利益がいくらになるかをシミュレーションすることができます。

また、固定費の利用度を示すものでもあるため、一般的に経営レバレッジ係数が高ければ高いほど、売上高が増加した場合の営業利益の増加率が高く(固定費の比率が大きく)、企業の安全性は低いといわれます。

経営レバレッジ係数は営業量(売上高)の変化率に対する営業利益の変化率を示す

経営レバレッジ係数の計算

経営レバレッジ係数は限界利益を営業利益で除して求めます。以下の例で考えてみましょう。

経営レバレッジ係数=貢献利益/営業利益

損益計算書
売上高100千円
変動費60千円
貢献利益40千円
固定費30千円
営業利益10千円

このような場合、経営レバレッジ係数は40千円÷10千円=4となります。

経営レバレッジ係数の意義

経営レバレッジ係数は、営業量の変化率に対する営業利益の変化率を示す指標です。

すなわち、経営レバレッジ係数が4の場合、営業量(売上高)の増減率が1のとき、営業利益の増減率はその4倍になることを表します。

増加前増加後
売上高100千円+20%120千円
変動費60千円+20%72千円
限界利益40千円+20%48千円
固定費30千円30千円
営業利益10千円+80%18千円

経営レバレッジ係数の算定式は次のとおりです。
営業利益の増加率=売上高の増加率×経営レバレッジ係数

経営レバレッジ係数は4なので、限界利益の増加率が20%の場合、営業利益の増加率は80%(=20%×4)になります。

例題のように、営業利益の増加額(=48-40)と、限界利益の増加額(=18-10)は同じ8千円です。この理由は、固定費が変化しないことによって、限界利益の増加額がそのまま営業利益の増加額となるためです。

すなわち経営レバレッジ係数は、固定費の利用度を示すものでもあるといえます。経営レバレッジ係数が高い場合は限界利益に対する固定費の割合が高く、企業の安定性は低いといわれます。

  • 経営レバレッジ係数は、固定費の利用度を示す
  • 経営レバレッジ係数が高い場合、総費用に占める固定費の割合が高くなるため、一般的に企業の安定性は低いと考えられる

例題

次の文章の中の(  )内に適切な数字あるいは用語を記入しなさい。

X社Y社
販売量10,000個10,000個
販売単価200円/個200円/個
変動費200千円1,400千円
固定費1,500千円300千円

販売量と販売単価及び営業利益は同じであるが、原価構造が異なる以下のX社とY社を想定してみよう。

X社の貢献利益は( ① )%であり、営業利益は( ② )千円である。販売量を( ③ )%増やした場合、X社では貢献利益は( ④ )千円増加する。ところが、Y社ではそれほど増加しない。貢献利益率が高いX社の場合、営業利益を増加させるためにはY社ほど販売量を増やす必要はないのである。このことから、X社とY社を比較して( ⑤ )の方が、すすんで多額の広告宣伝費を投じようとすると予測できる。一方、販売量が現在よりも( ③ )%減った場合、X社の営業利益の減少は( ④ )千円であるが、Y社の営業利益は48千円の減少にすぎない。営業利益が売上水準によって大きく変化するという点からは、X社はY社と比較して経営上のリスクが( ⑥ )という解釈ができる。

解答・解説

X社とY社の損益計算書は次のとおりになります。

X社Y社
売上高2,000千円2,000千円
変動費200千円1,400千円
貢献利益1,800千円600千円
固定費1,500千円300千円
営業利益300千円300千円

① X社の貢献利益率
1,800千円÷2,000千円×100=90%

② X社の営業利益
損益計算書より300千円

③ 販売量増加率
経営レバレッジ係数の計算
X社:1,800千円÷300千円=6
Y社:600千円÷300千円=2
経営レバレッジ係数は、営業利益の増加率が売上高の増加率の何倍に相当するかを表します。すなわち、経営レバレッジ係数が大きい企業ほど、売上高の増加率に対する営業利益の増加率は大きくなります。

販売量を( ③ )%減少した場合、Y社の営業利益は48千円とあるため、販売量の増減率をaとすると、次の式を置くことができます。

300千円 × a(販売量の増減率)× 2(経営レバレッジ係数)= 48千円
aについて解くと a = 0.08

よって、販売量の減少率は8%となります。

(補足)Y社の営業利益が48千円減少した時の減少率は16%(48千円÷300千円)となる。経営レバレッジ係数2であるため、販売量が8%減少した時の営業利益の減少率は16%(8%×2)という関係が成り立つ。

④ X社の貢献利益増加額
販売量を8%(③より)増加した場合、損益計算書は次のようになります。X社の貢献利益は減少前の1,800千円から1,656千円まで144千円減少します。

X社
売上高1,840千円
変動費184千円
貢献利益1,656千円
固定費1,500千円
営業利益156千円

(補足)X社の経営レバレッジ係数は6である。販売量が8%減少した時の営業利益の減少率は48%(8%×6)となるため、営業利益は300千円から48%減少し156千円(300千円×(1ー48%))となる。

⑤ 経営上のリスク
経営レバレッジ係数が大きいほど、売上高の増減率に対する営業利益の増減率が大きくなります。すなわち、経営レバレッジ系数の大きな会社は売上高があまり減少していなくても、営業利益は大きく減少します。このことから、経営レバレッジ係数が大きい企業は「ハイリスク・ハイリターン」と言われます。したがって、経営上のリスクは大きいという解釈ができます。