製造業などにおいては、製品の原価を計算する必要があります。
そもそも、製品の原価を把握しなければ製品のいくらで販売するかを決定することができませんし、利益管理をすることもできません。
そのため、原価要素の一つである「材料」についても原価を正確に算定する必要がありますが、材料を調達したときの購入原価はどのように決まるのでしょうか。
この記事では、材料の購入原価の計算方法や材料副費について解説します。
材料副費とは何か知りたい
材料の購入原価の計算を理解したい
材料副費の仕訳が出来るようになりたい
材料副費とは
材料副費とは、材料の購入に際し附随的に発生する費用のこと(本体価格以外の支出)です。
例えば、材料を購入するのに必要な手数料や運賃、また材料を保管するための保管料などをいいます。
これらは、主に外部副費と内部副費に分けることができます。そのうち、外部副費のことを引取費用と呼びます。
- 外部副費(引取費用):材料を購入してから倉庫に納入するまでにかかった費用のこと。
(例)買入手数料、引取運賃、荷役費、保険料、関税など - 内部副費:材料を受け入れた後に発生する費用のこと。
(例)検収費、整理費、保管料、購入事務費など
材料の購入原価
原価計算基準の記載について
材料の購入原価の計算方法は原価計算基準の一一(四)に記載されています。
原価計算基準:1962年に大蔵省(当時)企業会計審議会が公表した会計基準で、原価計算に関する実践規範のこと
『原価計算基準』一一(四)
材料の購入原価は、原則として実際の購入原価とし、次のいずれかの金額によって計算する。
1 購入代価に買入手数料、引取運賃、荷役費、保険料、関税等材料買入に要した引取費用を加算した金額
2 購入代価に引取費用ならびに購入事務、検収、整理、選別、手入、保管等に要した費用(引取費用と合わせて以下これを「材料副費」という。)を加算した金額。ただし、必要ある場合には、引取費用以外の材料副費の一部を購入代価に加算しないことができる。
購入原価の計算方法
原価計算基準によると、材料を購入した場合、その購入原価(取得原価)は次3パターンあることになります。
購入代価 + 引取費用
購入代価 + 引取費用 + 内部副費
購入代価 + 引取費用 + 内部副費の一部
このように、いずれの場合も引取費用については購入原価に含める必要があります。
- 引取費用は必ず購入原価に含める
(例)買入手数料、引取運賃、荷役費、保険料、関税など - 引取費用以外の材料副費(内部副費)は購入原価に含めないことができる
材料購入時の仕訳
材料9,500円を掛けで購入し、引取運賃500円を現金で支払った。
引取運賃は材料に含めて処理をします。そのため、材料は購入代価(9,500円)と引取費用(500円)の合計の10,000円になります。
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
材 料 | 10,000 | 買 掛 金 現 金 | 9,500 500 |
材料副費の予定配賦
材料副費は、実際額のほか予定額をもって配賦することができます。
予定価格は、なるべく早く計算結果を知りたいという経営者層の要望に応えるなどの目的があります。(実際の購入原価を計算するのには時間が掛かるため)
原価計算基準の記載について
迅速な製品原価の算定等の目的で、予定価格を用いて材料の購入原価を算定することができます。(以下、『原価計算基準』一一(四))
『原価計算基準』一一(四)
購入代価に加算する材料副費の一部又は全部は、これを予定配賦率によって計算することができる。予定配賦率は、一定期間の材料副費の予定総額を、その期間における材料の予定購入代価又は予定購入数量の総額をもって除して算定する。ただし、購入事務費、検収費、整理費、選別費、手入費、保管費等については、それぞれに適当な予定配賦率を設定することができる。
内部副費の予定配賦の仕訳
材料副費の予定配賦については、あくまでも予定額なので実際額との間には差異が生じます。この差異は最終的に財務諸表を作成する段階で調整されます。予定配賦額と実際発生額の差額は、材料副費配賦差異勘定に振り替えられます。
1. 材料10,000円を掛けで購入した。なお、材料副費については購入代価の10%を予定配賦する。
2. 材料副費の実際発生額は1,100円であった。
3. 材料副費の実際発生額と予定配賦額の差額を材料副費配賦差異勘定に振り替えた。
1. 材料を購入したときの仕訳
材料副費の予定配賦額は購入代価の10%なので 10,000×10%=1,000 となります。
この時、「材料副費」勘定は貸方に記帳します。
また、借方の材料は購入代価(材料本体の価格)と材料副費の合計になります。
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
材 料 | 11,000 | 買 掛 金 材 料 副 費 | 10,000 1,000 |
2. 材料副費の実際発生額が判明したときの仕訳
材料副費の実際発生額が判明した場合には、「材料副費」勘定の借方に記帳します。
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
材 料 副 費 | 1,100 | 現 金 | 1,100 |
このように、材料副費の借方には実際発生額、貸方には予定配賦額が転記されます。
材 料 副 費 | |||
実際発生 | 1,100 | 予定配賦 | 1,000 |
あ |
3. 材料副費配賦差異への振替
予定配賦額と実際発生額の差額は、材料副費配賦差異勘定に振り替えられます。
借 方 | 金 額 | 貸 方 | 金 額 |
材料副費配賦差異 | 100 | 材 料 副 費 | 100 |
計算にあたっては、まずは「材料副費」勘定をまとめるようにしましょう。借方の実際発生額と貸方の予定配賦額との差額が材料副費配賦差異となります。
なお、仕訳後の勘定は次のようになります。
材 料 副 費 | |||
実際発生 | 1,100 | 予定配賦 | 1,000 |
配賦差異 | 100 |
材料副費配賦差異 | |||
配賦差異 | 100 |