税効果会計とは?商品評価損に関する税効果会計が必要な理由と調整方法について

簿記の解説
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この記事では、商品評価損に関する税効果会計の考え方について解説します。

こんな人におすすめ !

 会計と税務の考え方の違いを知りたい

 税効果会計が必要な理由を知りたい

 法人税の調整仕訳がわからない

会計と税務の考え方の相違

財務会計は適正な期間損益計算を目的としています。当期において発生した商品の簿価切り下げをその会計期間の損益に反映させることを目的としています。

一方で、税務は課税の公平性を重視して課税を行います。そのため、商品評価損のような見積による費用の計上は原則として認められません。そのため、商品評価損は税務上の損金(税務上の費用)に算入できません。

したがって、会計上と税務上の税金計算にズレが生じてしまうため、これらを調整する処理が必要となります。

 会計は適正な期間損益計算を目的とする

 税務は課税の公平性を重視する

発生年度における調整

まずは、商品評価損が発生した年度の調整について見ていきましょう。

例 題

税効果会計を適用し、法人税等の金額を調整する仕訳を答えなさい。(X1年度)
・収益 100円
・費用(商品評価損) 20円
・法人税の実効税率 40%

会計上の取り扱い

会計は適正な期間損益計算を目的としています。そのため、期末商品を評価したところ商品評価損が発生した場合、それを発生年度の費用として損益計算書に反映します。

借   方金   額貸   方金   額
商品評価損20商   品20

会計上の税引前利益の計算(損益計算書)は次のとおりです。

会 計(X1年度)
収   益100
費   用20
税引前利益80

税務上の取り扱い

税務上は、原則として商品評価損を損金(税務上の費用)に算入できません

したがって、税務上の課税所得の計算は次のようになります。

税 務(X1年度)
益   金100
損   金0
課 税 所 得100

なお、税務上 商品評価損は次のような場合に損金に算入することができます。

 災害により著しく損傷したことで発生した場合

 棚卸資産が著しく陳腐化した場合<

法人税等の調整

会計上と税務法の課税所得の計算は次のようになります。

(図1)調整前の法人税等の金額

損益計算書(X1年度)
収   益100
費   用20
税引前利益80
法 人 税 等40*

* 法人税等は課税所得を基準に算定される
100(課税所得)×40%

税 務 上(X1年度)
益   金100
損   金0
課税所得100

損益計算書では、税引前利益に実効税率をかけた32円(80円×40%)になるはずですが、法人税等の金額は40円となっています。

その理由は、税務署では課税所得(100円)をもとに法人税等を算定し企業に納税通知をしているためです。

そこで、法人税額を会計上の法人税等32円に合わせる調整が必要になります。具体的には、「法人税等調整額」を用いて税金の額を調整します。

(図2)調整後の法人税等の金額

損益計算書(X1年度)
収   益100
費   用20
税引前利益80
法 人 税 等40
法人税等調整額8
税 務(X1年度)
益   金100
損   金0
課税所得100

このように調整することで、法人税等の額は32円(点線太枠内)となり、税引前利益と整合します。

  • 納付する法人税等は課税所得を基準に算定される
  • 損益計算書の税引前利益と法人税等の金額が不整合となるため調整(法人税等調整額)が必要

法人税等調整額の仕訳

法人税等調整額の仕訳は次のようになります。

借方には繰延税金資産を計上します。これは、損益計算書(会計)では法人税等は32円のところ、実際には40円の法人税を納付していることから、法人税等の前払いを意味しています。

借   方金   額貸   方金   額
繰延税金資産8法人税等調整額8

法人税等調整額:法人税を8円減額する調整(貸方)
繰延税金資産:税金の前払的性質

この仕訳は、解消年度に取り崩しを行うことになりますので、続きの記事を参照してください。

解消年度の調整について

続いて、解消年度の調整について見ていきます。解消年度とは、商品が実際に売却されて、損益が確定したタイミングをいいます。

例 題

税効果会計を適用し、法人税等の金額を調整する仕訳を答えなさい。(X2年度)
・収益 100円
・費用(商品評価損) 発生なし
・法人税の実効税率 40%

なお、X1年度にて商品評価損20円を損金不算入として処理しているが、当期において商品が販売されたため全額の損金算入が認められた

会計上の取り扱い

会計上は費用は発生していませんので、特に費用に関して処理は必要ありません。

借   方金   額貸   方金   額
仕訳なし

税務上の取り扱い

X1年度において税務上は、商品評価損の損金算入は認められていませんでした(商品の簿価切り下げを行なっていない)。そのため、その商品を正味売却価額で売却したときに商品売却損が発生します。

このように、税務上は商品が売却されて損益が確定した年度に、損金算入されると考えます。

借   方金   額貸   方金   額
現 金 等
商品売却損
XXX
20
商   品XXX

法人税等の調整

X2年度では、会計上の費用は0円であるため、税引後利益100円に法人税率を乗じた40円(100円×40%)が損益計算書の法人税等の金額になるはずです。

しかし、実際に納付するのは課税所得を基準に算定した32円(80円×40%)であるため、その金額が法人税等として損益計算書に記載されます。

そのため、会計上の法人税等に調整する処理が必要となります。

損益計算書(X2年度)
収   益100
費   用0
税引前利益100
法 人 税 等32
法人税等調整額8
税 務(X2年度)
益   金100
損   金20
課税所得80

法人税等の額は40円(点線太枠内)となり、税引前利益と整合します。

  • 税務上は、損益が確定した時点で損金算入が認められる。
  • 損益計算書の税引前利益と法人税等の金額が不整合となるため調整(法人税等調整額)が必要

法人税等調整額の仕訳

法人税等の調整と繰延税金資産の取り崩しの処理を行います。

借   方金   額貸   方金   額
法人税等調整額8繰延税金資産8

法人税等調整額:法人税を8円増額する調整(借方)
繰延税金資産:X1年度の取り崩し

解消年度にて繰延税金資産は取り崩される。